さいはての中国

中国の影に焦点を当てた一冊

中国といえばどんなイメージを持つか?
「ファーウェイに代表されるIT機器製造の躍進。」
「今やアメリカを越す勢いで伸び続ける経済。」
といった部分が最近の報道では目立つところである。

うまくいっているように見える中国であるが、当然影もある。
その影である部分にフォーカスしたのがこの『さいはての中国』という一冊。
中国に詳しいライターが、ディープな中国に取材をしに行ってまとめられたものである。

  • 所得が増えて海外での爆買いに勤しむ中国人ではなく、ネットカフェにこもってネットゲームに熱中する廃人。
  • 中国の経済成長にチャンスを見出したアフリカ系移民が形成するアフリカ街。
  • 90年代までの日本を超える援助で、カンボジアでのビジネスチャンスをガッチリ掴む外交政策。

など、日本のテレビ・新聞では知ることができない中国の一面を見ることができておもしろい一冊だった。

この中で気になった部分が「反日のグランドマスターに会う」という章。
ここを読んで、日本人が日本の足を引っ張ることもあるという側面について気づけたのでまとめて、この本の紹介としたい。

英語圏で、日本の戦争加害を広める活動をする中国系団体

カナダ・トロントで活動するジョセフ・ウォンという香港系カナダ人への取材が元になっている。

この人は日本の第二次大戦中の戦争犯罪を告発するALPHA Educationという組織を結成して、南京大虐殺や従軍慰安婦といった問題を広める活動をしている医者である。
(あくまで、人道に反する事実を忘れないようにすることが目的であって、中国のナショナリストでも日本人を嫌う人でもない。当然中国政府の援助を受けてもいない。)

そのジョセフが著者にした質問が、
「非常に不思議なのです。日本は自由で民主的で教育水準も高い国家なのに、国民はなぜ政府に対してチャレンジしないのか?つまり、政府が歴史を否認し続けることに国民が誰も抗議せず、歴史についての情報も得られていないのはなぜなのですか?」

つまり、ジョセフの認識はこうだ。

  • 日本政府は戦時中の加害行為を否定している。
  • 日本人は歴史の事実を知らされていない。
  • だから国民は政府の歴史観について抗議していない。

ということである。
実際には、日本の歴代首相は戦争での加害を認める立場であるし、小中高の社会科の教科書にも日本の戦争加害について記載はされている。
だから大部分の日本人は政府の立場を理解しているし、歴史の事実も知っている状態だから、抗議が出てくるわけがない状態である。

しかし、ジョセフは
「信じられません。カナダで若い日本人留学生に尋ねると『知らない』と答えますよ」
と著者に話す。(これは残念ながら歴史教育の責任ですよね。)

また、ジョセフに近い人がこうも言っている。
「私たちと交流がある日本人の市民活動家は『日本では歴史教育の自由が奪われ、教室では真実を語れない』『しばしば右翼の脅迫を受けている』と言っていますが……?」
つまりジョセフらの団体と左翼の日本人が親しくしているということである。

また、ジョセフらの団体や、その団体のロビー活動によって「南京大虐殺記念日」を成立させたトロント州議員には、日本の戦争加害を完全に否定するメールが大量に届くとのこと。
これは右翼の日本人の活動によるものだ。

ということはジョセフは左翼か右翼かの極端な考えの日本人しか知らないのである。

著者はジョセフにこう語った。
「日中戦争は侵略行為だと思いますよ。人数はさておき、南京で民間人や捕虜が多数殺害されたのも確かでしょう。しかし、日本政府は過去の歴史を認めており、公教育でもそれを教えています。中国や韓国の人の心情はともかく、少なくとも日本はすでに謝罪のメッセージを何度も出しています」
これが日本人の中道に位置する大部分の人の認識である。

するとジョセフはこう言った。
「そういう意見を話す日本人に会うのは初めてです」
「(略)あなたはどう見ても一般的な日本人ではないですよ」

アジアの歴史問題に関する活動をする人には、日本人の大部分の考えが本当に伝わらないところを著者がこの章で指摘している。

左翼と右翼

経済や政治、歴史についての考え方は人それぞれである。
それらの考え方の違いを直線上に並べた結果、左翼と右翼という相対的なポジションが生まれる。
法律を犯さない限りどんな考えでも、悪者ではないというのが今の日本社会。

世の中には、経済・政治・歴史についての考えを持つことすら放棄している人も見られる。
このような存在と比較すると、左翼も右翼も「真剣に考えすぎている人たち」なのではないかと思う。

ただ、「真剣に考えすぎた」あまりに起こした行動が日本の足を引っ張っているのかな、とこの本を読んで考えた。

最近こんなツイートが話題になった。

高須氏は右翼寄りのポジションと見られる人である。
かなり偏った1人の意見であっても注目は集める。
すると世界から「日本人は過去の戦争加害を認めない民族だ」と考えられやすくなる。

それって日本全体にとって得なのか?

敵を増やしても得はしない

日本って外国と仲良くしておかないといけないポジションだと思う。

石油やレアアースなどの資源は外国頼みであるし、
反対に「何が何でも日本にしがみついておかなきゃ」と他国に思わせられるだけのパワーは、武力にも政治力にも経済力にも無い。

ということは、歴史問題で他国とバチバチにやり合っている場合でもないし、他国から顰蹙を買うようなことがあってもいけないんですよね。

ということで、右翼の日本人が歴史を否定して、他国の人に「日本人ヤベーやつじゃん。」と思わせるのも良くないし。
左翼の日本人が、右翼日本人を攻撃する意図で他国の人に「日本人ってまじヤベーやつらが多いんですよ」と喧伝するのも良くない。

中道であることを意識しておかないといけないよね、と考えさせられた今日この頃。

そしてその中道の人がもっと世界に発信しないといけないのか?とも考えた。

ちょうどYouTubeにこんな動画も上がっていた。

ということで僕ができることとして中道の考えをもって海外に出て、人と関わっていきたいなと思う。